覚えられませんっ

元「覚えらんない人のためのオンラインソフト備忘録」。遅ればせながらブログ移行してみた次第。

EPWING辞書について

辞書は好きだ。俺が餓鬼の頃は辞書と地図帳は格好の遊び道具だった。生家はあまり裕福ではなかったので滅多なことでは本など買ってはもらえなかったから、暇ですることがなければ辞書や地図帳を眺めて過ごしていたのだ。俺が初めて購入したコンピュータはPC-9821であるが、なぜこの機種を選んだかというと「三省堂辞書ステーション」という辞書のCD-ROMが付属していた、というのがその大きな理由である。たしか10種類くらいの辞書が入っている、ということで、これだけでも2万円ぐらいの価値があるじゃん、という浅ましい考えがあった。
それ以来、俺は結構辞書ソフトに金を使ってきた。EPWING辞書はもちろん、電子ブックも結構買ったし、PDA用にシステムソフトの広辞苑なども買った。今辞書ソフトに金をかけようなんて奴はあまりいないだろうと思うが、俺は未だに当時の感覚が抜けきれず、ネット上の辞書よりもローカルの辞書の方を好んで使っている。

DDWINにはお世話になったなあ

辞書ビューワといえばまずDDWIN。このソフトがあったからこそWindows上でEPWING辞書や電子ブックがひけたわけで、俺はこのソフトがなかったらCD辞書など買わなかっただろう。下手するとシェアウェアというだけでバッシングされる今の風潮からは考えられないことだが、一時期愛好者たちが「無料で使うのは申し訳ない。シェアウェアにしてほしい。」という要望をまじめに出したほどである。にもかかわらず、DDWINは未だにフリーソフトである。シェアウェアであればJammingがあるが、同種のフリーソフトはなかなかなくて、孤高といってもいい地位を守り続けてきた。比較的最近登場したBuckinghamEBPlayerがあったが、流星のように消えてしまって現在では配布されていない。(InternetArchiveからは入手可能と聞いたが、今ではどうだろうか。)このソフト、たしかWindows版はフリーソフトだったが、PocketPC版、WindowsCE版は「ドネーションウェア」であった。これはユニセフなどの慈善団体に寄付することでライセンスを取得できるというもの。寄付など考えたこともなかった俺が、このソフトのライセンスを取得するためにユニセフに電話したっけ。(寄付しました、というメールを送れば実際には寄付していなくてもライセンスがもらえたようだが、作者氏の志を考えたとき、さすがに嘘はつけないよね)

EPWING変換ソフト作者の皆さんにも足を向けて寝られない俺

辞書好きの俺は、基本的にEPWING辞書を購入してきたが、EPWING版が存在しない場合独自規格のものも仕方なくいくつか購入している。日立デジタル平凡社の世界大百科、Cobuild English Dictionaryなどである。久しくこれらをEPWINGビュワーから利用できたらなあと思い、変換スクリプトなどを待ちこがれていた。Cobuildなど、DDWINの作者さんの変換ツールを発見し「やったあ」とおもったところ俺が持っているバージョン(しかも2つも持ってたのに)が見事に2つとも非対応だったりした。しかし2002年〜2003年にかけて、これまでも何度か話題にしているKWICをはじめとする有用なツールを提供してくれているEB series Support Pageでいくつかの変換スクリプトが配布され、俺を狂喜させてくれた。「世界大百科事典Toolkit」「Cobuild変換スクリプト」、システムソフトの辞書をEPWING変換してくれる「dessed」、PCSuccess版マイペディアを変換する「MypediaToolkit」などである。特に世界大百科とCobuildは長年待ち望んでいたものだったので、発見したときには深夜台所で喜びの踊りを踊った記憶がある。
EPWINGからPDIC形式に変換、とかならDDWINからテキスト抜き出してエディタで置換、とかいうことが可能である*1が、EPWING辞書への変換にはたいていRubyとかPerlみたいなスクリプト言語が必要になり、俺のような者にはちょっと敷居が高い*2感じではある。ヘルプ通りにやればたいていは大丈夫だが。

書かずにはいられないことがある

辞書関係ではひとつ悔やんでも悔やみきれないことがある。EB series Support Pageである日、ATOK17辞書セットのジーニアス英和・和英辞典と明鏡国語辞典をEPWING変換してくれるツールを見つけた。その時落としておけば良かったのだが、他に気をとられてうっかり落とし損ねてしまったのだ。「明鏡国語辞典」に興味があったので、これがEPWINGビューワでひけるのなら、とさっそく近所の電気屋で購入しAtok15から17にバージョンアップ。さあ、変換変換、とEB series Support Pageに出向いたところ、「な、ない・・・」
ジャストシステムからクレームが付いて、公開中止になさったとのこと。だったらバージョンアップなんてしなかったのに。すくなくとも電子辞書セットなんぞ買わなかったのに。ジャストシステムだか大修館だかどっちかわからんが、なんとケツの穴の小さいことを。そりゃこういう使用法は使用許諾違反かもしれんし、理解はできるけどねえ。音楽の世界のCCCDといい、こういう態度がむしろ売り上げを減らしてしまうと思うんだがなあ。俺は奥田民生のファンであるが、もし「Lion」*3レーベルゲートCDで発売されていたら絶対に購入しなかったぞ。
ちなみにAtok17の電子辞書セットですが、すくなくとも俺にとってはIMEに辞書がついていてもほとんど役に立たない、ということがよくわかりました。

そしてEBWin

最初に書いたように、ながらくDDWINの独壇場だったフリーのEPWINGビュワーであるが、あのEB series Support Pageに期待の新星が登場している。メインはあくまでPocketPC版の「EBPocket」であるらしいが、そのWindows版である「EBWin」。どちらもフリーソフト。着々とバージョンアップされていて、現時点で俺の環境ではDDWINより安定しているし、DDWINでは表示できない(設定次第かもしれないが)「新世紀ビジュアル百科事典」のインライン画像もEBWinでは表示できたりする。さらに最新版ではIMEオフのままでもMigemoライクに日本語検索ができるようになったりと、ほんとに実用的な機能も着々と搭載しつつある。ただ、あくまで開発のメインはEBPocketで、EBWinについての要望などはご遠慮くださいとのことである。
常時接続時代になり、EPWING辞書自体すでに利用者が限られてきていると思われる。そんな中でこうしたソフトを開発してくださる皆さんには本当に心から感謝しています。

*1:EPWINGPDICの変換は何回か経験済みだが、こういう100メガ級のテキストの正規表現を用いた置換などというときはエディタの置換性能がおもいっきり問われる。俺の数少ない経験のみでいえば、秀丸よりQXが速かった。さらに、同じ事をSpeeeeedでやったらほぼ一瞬で終わってしまったのには驚いた。Speeeeedの名はだてじゃねえと思い、それ以来使用頻度は少ないがいざというときのために常備しておくソフトとなっている。あと、EPWING化には画像ファイルの変換が必要になる場合があるが、これも配布中止になってしまったが疾風(TOKIKAZE)を重宝した記憶がある。

*2:誤用だと言うことを知った。文脈にあうように書き換えるのが面倒なので、注を付けておくが、「敷居が高い」に「難しい」の意味はなく、相手に不義理なことや面目ないことをしていて、その人の家に行きにくい、という意味しかないようだ。お恥ずかしい。

*3:J-Popなんぞ聞けるかとお思いのおっさんおばさんたちも、奥田民生だけは聴いて損はないと思う。ロックな親父なら「Lion」をCDプレイヤーに乗せ、最初の一音を聴いただけで俺が何を言いたいかわかるはずだ。名盤だと思う。